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2012年11月16日金曜日

宇宙戦艦ヤマト 地球はなぜ降伏を選択しないのか?(2)





twitterで地球はなぜ降伏しないか」という件について呟いたところ、

 「最後まで戦っていたのが日本艦隊だったから」
 「太平洋戦争末期の日本と同じで、降伏なんて選択しは最初から存在しなくて、
  勝利か、然らずんば自決というのが、軍部の方針だったから」


という回答をいただきました。
それについて思うことを綴ってみたいとおもいます。


■前提として ~ 作戦指導と戦争指導

「最後まで戦っていたのが日本艦隊だったから」について

これが冥王星沖海戦についての意見であるなら、私は、冥王星沖海戦で地球艦隊がガミラスの降伏勧告をはねつけたことは、むしろ当然であると考えます。
それに日本でなくとも作戦中に会敵しただけで(戦闘開始前に)降伏勧告を受け入れるなら、
それは軍規上の大問題です。
もっとも、旧作の設定であるならば、地球艦隊の指揮官が日本人以外だった場合、損耗が2-3割に達した時点で作戦中止したかもしれないとも思います。


そういう意味では、私も旧日本軍が上級司令部より「撃ち方やめ」の命令がない限り、戦い抜く軍隊だったことは評価していいと考えています。
しかし。これは、命令を受ける側に対する評価です。


むしろ問題は、

・上級司令部が隷下部隊に対して、戦闘停止命令を適切に発出できるか?(作戦指導)
・戦争指導部が適切な時期に戦争終結(降伏)の決断をできるか?(戦争指導)

という点です。命令を下す側の評価です。
「受けた側」と「下す側」は別々に評価しなければなりません。

残念ながら、第2次大戦での日本の作戦指導については、褒められたものではなかったと思っています。
非常に残念なことです。
極端な例ですが、特攻など大西中将自身がいっているように「統率の外道」そのものです。

□戦争指導部とは  しかし、本記事のテーマは作戦指導ではなく、地球の戦争指導についてです。
民主主義国家においては、文民統制・シビリアンコントロールが導入されていますから、戦争指導部とはすなわち政治(非常時にあっては、議会から大きな権限移譲を受けた政府)なのです。
戦闘停止命令が戦争指導部から発せられないかぎり、軍が戦い抜くことは当然であり、それが
あるべき姿だと私は考えますから、国連宇宙軍が日本艦隊を出撃させたことは当然(作戦自体の評価は別)です。
その軍に戦闘停止を命じるのは、あくまで戦争指導部です。


現代の日本人はどうも誤解している向きが多いように思いますが、民主主義国家においては、
戦争の開始と終結の判断は、軍部ではなく政治の役割です。先ほどのtwitterでの「軍部の方針」だったからといって、政治決定に反して勝手に戦争を継続することは許されません。
あるとすれば、それは、
 ・民主主義体制になく、軍が全件を掌握している。
 ・そして、軍自体が降伏するくらいなら地球人すべてが滅んだほうが良い、と考えるほどに
  極端な思想に染まっている。

この2つの条件を充たすときのみです。

twitterのフォロワーさんの指摘にある「太平洋戦争末期の日本と同じで...軍部の方針だったですが、太平洋戦争末期の終戦をめぐる混乱は明治憲法下の日本故に生じた問題です。
立憲君主制でありながら、統帥権を独立させていたことにより、軍に対する政治の優位が機能しない国家体制だったという、開戦と終戦の決定を誰が(またはどの会議が)行うか明確でないという、特殊なケースです。また、軍部自体、明確な方針をもって戦争に望んでいたわけではありません。
とりあえず戦争に打って出ただけですので、終わらせるための条件がなかったのが実情です。

前述のように、現在の主要な国々は民主主義体制のもと文民統制・政治優位を制度化していますから開戦や終戦の決断は政治が行います。

私は、将来もまともな政軍関係(文民統制)を維持して欲しいと考えていますし、国家に反逆するような
恥さらしな国軍を持ちたいとも思いません。
一方では、別命がない場合、最後まで戦い抜くような軍律に厳しく、かつ旺盛な士気を持った軍であって欲しい。
そして、将兵を無駄死にさせない作戦指導を上級司令部には期待したい。



当然、ヤマト世界でもすべての人々が己の職責を果たすべく、全力を尽くしていると思いたい。
それでも、滅亡寸前に追い込まれているとしたら、それはなぜ?


■ヤマト世界での戦争指導部とは?

さて、戦争指導についての問いである、と書きましたがヤマト世界での戦争指導部とはいったい
何が相当するのでしょう?
22世紀においても国際連合が存在し、地球統一政府は存在していません(「さらば」でアンドロメダの進宙式に地球連邦初代大統領が臨席しています)。
2199では国連宇宙軍が編成されていますが、これは国連総会または国連安全保障理事会の決議をうけて司令部が設置され、指揮下部隊は各国からの派遣部隊からなる、ということになります。
ただし、国際連合憲章第7章に基づく正規の国際連合軍なのか、国連朝鮮派遣軍と同じ位置づけかは不明です。
国連宇宙軍に戦闘中止を命じることができるのは、安保理または国連総会決議ということになります。
ここでわかると思いますが、沖田指揮する艦隊は「日本艦隊」ではなく「国連宇宙軍艦隊」であって、たまたま日本国から提供された艦艇のみで編成されているわけです。国連軍に参加中は、当然国連軍の指揮下にあるわけです。言い換えると、安保理決議をうけて国連軍(この場合は国連宇宙軍)から戦闘中止を命令されることになります。
よって、「日本艦隊だから」戦い続けた、ということは成り立ちません。国連軍司令部、さらには安全保障理事会または総会で戦闘停止を決議しなかったということになります。


さて、そこまで考えてふと気づいたのですが、第2次大戦における、日本のポツダム宣言受諾の決定は言われるほど遅くはなかったのではないでしょうか?
第2次大戦の多くの参戦国が本土で地上戦を戦い、多くの市民が命を落としています。本土で地上戦を行わずに済んだのは、日英米くらいです。もちろん、陸続きの欧州、とくにドイツに攻め込まれた側は仕方がない部分もありますけど。

2012年11月15日木曜日

宇宙戦艦ヤマト 地球はなぜ降伏を選択しないのか?

大日本帝国ですら、降伏を選択したのに、何故未来の地球は降服しなかったんでしょうね? 
勝てないことが明確になってから休戦を申し入れてもガミラスに無視されたのだろうか?

2199の場合、シュルツの述懐があるので、どう考えても地球側に降伏の意思がないようだ。
あれさえなければ、交渉チャンスは緒戦時の一度だけだった、と理解することも可能になってくるのだが。

この疑問は、旧作、2199共通のものです。
旧作のナレーションも「絶滅か奴隷かを求め情け容赦のない攻撃繰り返している」となっている。
滅亡が目前に迫っても降伏(すなわち奴隷化)をよしとせず、抵抗を続けているということだ。
独立を失うどころではなく、種としての地球人類が絶滅しようというのに抵抗を続けることが、果たして正しい判断なのか?沖田さんが言ったように「今日の屈辱に耐える」ことで捲土重来の機会もあろうというもの。そこまで、地球人が馬鹿だと思いたくない。

やはり、設定としては、ただ絶滅させるために遊星爆弾攻撃を仕掛けてきた、でよかったと思う。
相手の目的が地球人類を滅ぼすことなら、地球は徹底抗戦しか選べない。ってか、手をあげても発砲は止まらないので、滅亡の日まで戦いが続いているということです。それなら、理解できます。
もっとも、その場合、冥王星沖海戦で「地球艦隊につぐ、直ちに降伏せよ」という降伏勧告もなく、したがって、沖田さんのあの「バカめ」のセリフもなくなりますが(^_^;)


ただし、いずれにしても、種としての地球人を絶滅させる合理性はないので、
「悪逆非道な宇宙人が攻め寄せてきて、地球人の絶滅を目標に情け容赦のない攻撃を続けている」という設定以外できません。
無理に設定するなら「捕虜はとるな」と同じ理由。生かしておくと、面倒見る手間がかかる。地球人の労働力を欲していないなら、片付けてしまったほうが手間いらずです。


'74年版当時は、先の大戦で降伏したことを潔しとしないメンタリティが存在していたのであろうか?








2012年11月14日水曜日

宇宙戦艦ヤマト2199における指揮権継承問題

古代が上級者や先任者(森船務長)(注1)を差し置いて艦長代理につくことができるか?

指揮権継承は軍隊に限らず企業でも「決裁権限」と「権限移譲・委任」の規定を作成するわけで、一般社会でも重要な問題なんですよね。

現実世界で権限継承が詳細に定められている例に米国の大統領権限継承順位がありますよね。18位まで定められているそうで。日本国首相の権限継承順位は組閣時に5位まで指定して官報掲載されてるし。兎にも角にも重要な問題なわけで。

では、軍隊での指揮権継承はというと、代理する者が別に定められていない場合は将校名簿の記載順とするのが世界共通です。
因みに日本海軍では「軍令承行令」で継承順位が定められていましたし、自衛隊では防衛庁訓令第80号「指揮代理に関する訓令」、防衛庁訓令第12号「自衛官の順位に関する訓令」で規定されています。
ちなみに、以下で読めます。 
・防衛庁訓令第80号「指揮代理に関する訓令」http://t.co/GebUIKDd 
・防衛庁訓令第12号「自衛官の順位に関する訓令」http://t.co/Bzjaw427 

そこでヤマトですが、上記を考えると、いよいよ古代がヤマトの指揮を執ることは難しくなります。
上級者として真田三佐、徳川三佐がいて、同じ一尉でも森船務長 新見さんが先任です。(注2)
旧作の沖田さんの命令をもって「代理に指定された」者といえるのかは?です。

2199ではひとつウルトラCの提案。古代を野戦任官で二佐に任じてしまう、という解決策はどうでしょう?
ちなみに、現実世界の海上自衛隊では尉官の任免(採用・昇任・退職等)権は海幕長、佐官は防衛大臣に任免権があります。あと、尉官であっても有事(訓令では行動中)の退職も防衛大臣の許可が必要。 
ということで、艦長がある幹部を戦時昇進させることはできません。

フィクション作品中ならなんでもありなので、戦時昇進や補職の権限を艦長に委任できる規定がある、
と設定すればALL OKだと思います。


設定に階級を持ち込んだことは制約になる一方、うまく料理すれば新しいエピソードを作れるわけですから物語に活かしてほしいものです(ああ、話がまとまらない)。



注1)第1章のパンフレットなどで最初から1尉となっていたので、森雪が古代たちより先任かと思っていましたが、映像では肩章が一本線でメ号作戦から帰還した古代、島と同じでした。よって、キャラ紹介等にはありませんが、ヤマト乗組、船務長発令の際 一尉の特進したようです。 2013.01.23追記

注2)第2話を見なおしたところ、古代や雪の肩章が1本の三尉のシーンでも新見さんは三本線で一尉でした。 2013.01.23追記

2012年11月11日日曜日

「撃沈」という言葉の使い方

ヤマト2199もそうですが、多くの作品で「撃沈」という言葉の使い方が正しくないのが気になる。「撃沈」は「撃ち沈める」「沈没させること」を意味するので、味方が沈められたときは「撃沈された」となる。自軍の損害報告は「味方巡洋艦、轟沈」とか「爆沈」が正しい。

宇宙戦艦ヤマト2199のガミラス艦艇のクラス名

宇宙戦艦ヤマト2199のガミラス艦艇のクラス名メモ。

公式HPより抜粋すると以下。

  クラス名    設定名          ガミラス艦種区分    地球側分類
ガイデロール級  航宙戦艦         二等航宙戦艦      戦艦
デストリア級    航宙重巡洋艦       二等航宙装甲艦     戦艦
ケルカピア級   航宙高速巡洋艦     二等航宙装甲艦     巡洋艦
クリピテラ級    航宙駆逐艦        二等航宙装甲艦     駆逐艦 
メルトリア級    航宙巡洋戦艦       二等航宙装甲艦    巡洋戦艦
(ドメラーズⅢ)  超弩級一等航宙戦闘艦

ポルメリア級   航宙強襲航宙母艦 
ガイペロン級   多層式航宙母艦


ちなみに第1話のメ号作戦の冒頭シーンで「きりしま」のモニター表示。

表示クラス名   数     シルエット
超弩級宇宙戦艦 1     ガイデロール級
宇宙戦艦      7     デストリア級
宇宙巡洋艦    22     ケルカピア級
宇宙駆逐艦    74     クリピテラ級


ドメラーズⅢのガミラス側区分は 当然「一等航宙戦艦」なんでしょう。
4章のドメル艦隊のシーンは、「ドメラーズⅢ」以外にも一等航宙戦艦、一等航宙装甲艦に登場してほしい。
2等ガミラス人で編成された部隊ゆえ、冥王星のガミラス艦隊は二等戦艦、二等装甲艦しか配備されていない二線級部隊、という設定だと思っていたのですが。

一方、純血ガミラス人で編成した部隊は個艦戦闘力にまさる一等戦艦、一等装甲艦での編成かと。

それにしても、ドメラーズⅢクラスの設定名「航宙戦闘艦」は、「航宙戦艦」と別の艦種なんだろうか?表記ミス?

海上自衛隊の護衛艦命名についての一考察

海上自衛隊の護衛艦命名についての一考察

旧海軍含めて、各国海軍は艦艇をいくつかのクラスに分類しています。任務の違いや、はては艦長の階級、給与の違いとリンクしているわけです。
さて、戦後の我が海上自衛隊の使用する艦船は「自衛艦」と「支援船」に区分されます。「自衛艦」が国際法上の軍艦になります。
この「自衛艦」は予算上「警備艦」と「補助艦」に分けられていますが、「警備艦」はその任務により、「機動艦艇」「機雷艦艇」「哨戒艦艇」「輸送艦艇」に細かく区分されます。「護衛艦」は前記「起動艦艇」の中心になる「艦種」です。
ただ、海上自衛隊は「護衛艦」「潜水艦」の2つにしか分類していないのです。
他国、アメリカの場合、日本の「起動艦艇」に含まれる艦種は、
 航空母艦
 巡洋艦
 駆逐艦
 フリゲート
 潜水艦
などがあります。
つまり、日本の「護衛艦」は世間の「巡洋艦」「駆逐艦」「フリゲート」を含めた区分(水上戦闘艦くらいの意味)です。
艦種区分は、各国が独自に決めるので別におかしくはありませんね。

ちなみに、我が護衛艦の艦名でなんとなく、その時々での海上自衛隊内での位置づけ(期待度?)が解ります。

最新ヘリ搭載護衛艦DDHは、世間でいうヘリ空母みたいなものですが、「いせ」「ひゅうが」と旧国名を当てています。これは旧海軍では戦艦の命名基準。
ちなみに旧海軍の伊勢型戦艦「伊勢」「日向」はミッドウェー海戦の敗北後、空母不足を補うため航空戦艦に改装されました。戦艦の中から伊勢型と同じ艦名を採用したのは、意味があるのでしょう。
旧型ヘリ搭載護衛艦DDHは、「ひえい」「しらね」など、山の名前。山の名前は旧海軍の一等巡洋艦の命名基準です。当時の護衛艦のなかで最大の艦だったDDHに一等巡洋艦の名称だったわけです。
同じDDHでもヘリ搭載護衛艦(3機搭載)から実質的なヘリ空母に拡大強化されたことで艦名が 一等巡洋艦から戦艦のそれに格上げされたわけです。

DDGでも同様のことが見て取れます。
現在のイージス護衛艦DDGは、「こんごう」「あたご」など山の名前で、一等巡洋艦の基準。
同じDDGでもイージス以前の艦は「たちかぜ」「はたかぜ」で天象・気象を表す単語で旧海軍では駆逐艦と同じ基準。イージス搭載型になって性能が大幅アップして、大きくなったので、駆逐艦から巡洋艦に格上げになっています。

ちなみに現在建造中のあきづき型護衛艦は区分こそDDですが、従来のDDに対して対空戦能力をを大幅に強化し僚艦防空能力をもった、いわば防空直衛艦。艦名の「あきづき」は旧海軍の防空駆逐艦「秋月」型にならった命名です。