戦艦大和の悲劇を語るときなどに良く言われる、「戦艦vs飛行機」の比較で戦艦の負け、ってのはおかしい。
なぜなら、一対一なら負けることはないから。
航空攻撃は多数機で行うものだ、と反論されそうだが、それをいうなら戦艦も単艦では行動しないのである。
ということは、「戦艦vs飛行機」という比較自体に無理があるということだ。
第二次大戦後半以降、海軍戦力の柱が戦艦から空母(と搭載される航空戦力)に変化したのは、限られた予算で戦力を整備するなら多目的に使用でき、戦艦より広範囲を制圧できる、空母(と搭載される航空戦力)の方が効果的であるからであって、前述したように、「戦艦vs飛行機」の比較で飛行機が優位だから、というわけではない。
大体、水上艦隊は航空攻撃に対して巷で言われるほど、弱いのだろうか?
たとえば、米艦に対して、著しく防空力が劣る日本艦隊にしても航空攻撃による被害は思ったほど多くない。
マリアナ沖海戦(1944.06.19-20)での、米母艦航空隊216機による航空攻撃(6.20)による我が艦隊の被害は
沈没:空母1/油槽船2
中破:空母1
小破:空母3/戦艦1/重巡1/油槽船1
米攻撃隊の戦闘損失 約20機(帰還時の事故で約80機の損失)
この海戦での、日本側被害の重要な点は、むしろ参加母艦航空兵力の3/4以上となる378機もの航空機の損失である。艦は残ったが攻撃力の中心である母艦航空隊が壊滅、二度と再建できなかったことが重要なのである。
母艦航空戦力の喪失は、すなわち米艦隊に対する攻撃力の喪失を意味するからだ。
水上砲戦部隊では空母任務群を補足することは実質不可能であることを思い出してもらいたい。
もっとも、この時期、洋上行動中の米艦隊を航空攻撃しても戦果は望めないが。
なお、この母艦航空隊の損害の大部分は 米戦闘機によるものであり、飛行機の最大の敵は飛行機だったことになるが、航空機の傘が無い艦隊は生き残れないわけではないのは先に上げたとおり。
水上艦隊が航空攻撃に思いの外耐えたことを示す例として、日本側にまったくエアカバーがなかったシブヤン海海戦をあげてみよう。
この海戦でも 5次にわたる、のべ256機の攻撃による我が艦隊の損害は、
沈没:戦艦1
中破:重巡1/駆逐艦1
小破:戦艦3/重巡1/駆逐艦1
にすぎないのである。
これらの海戦で、もし、日本艦隊の対空火力(砲とVT信管、高射装置)が米艦隊並だったらどうだったろう?
さらに被害は極限されていたはず。ひょっとすると、喪失艦はなかったかもしれない。
一方、日本艦の防空能力が米艦なみだったなら、米空母任務群も我が軍同様、早期に攻撃能力を消失したのではなかろうか?
結局、日本海軍が艦隊戦において米海軍に敗れたのは、戦艦中心だったからではなく、艦隊防空能力がお粗末だった、と評価すべきなのだ。
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